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ことうのおに
孤島の鬼
江戸川 乱歩
「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页
古道具屋の客
どうしてもその位かかる。五日目には、何か吉報がもたらせるかも知れないから」と云った。私は彼の思わせぶりが不服ではあったけれど、でも、ひたすら、彼の尽力を頼む外はなかったのである。
古道具屋の客
家人が心配するので、私はその翌日から、進まぬながらS・K商会へ出勤することにした。探偵のことは深山木に頼んであるのだし、私にはどう活動のして見ようもなかったので、一週間と云った彼の口約を心頼みに、空ろな日を送っていた。会社がひけると、いつも肩を並べて歩いた人の姿の見えぬ淋しさに、私の足はひとりでに、初代の墓地へと向うのであった。私は毎日、恋人にでも贈る様な、花束を用意して行って、彼女の新しい卒塔婆の前で泣くのを日課にした。そしてその度毎に、私の復讐の念は強められて行く様に見えた。私は一日一日不思議な強さを獲得して行く様に思われた。
二日目にはもう辛抱が出来なくて、私は夜汽車に乗って、鎌倉の深山木の家を訪ねて見たが、彼は留守だった。近所で聞くと、「一昨日出かけた切り、帰らぬ」ということであった。あの日巣鴨で別れてから、そのまま彼はどこかへ行ったものと見える。私はこの調子だと、約束の五日目が来るまでは訪ねて見ても無駄足を踏むばかりだと思った。