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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
木戸の外でも猫の干物と女狐とが掴み合いの一ト幕の事
……やっぱり男の子というものは幾歳になっても」
と、独り胸を傷めている姿だった。
ところへ、玄関の方でどやどやと大勢の声がした。出てみると、伜の雷横が勤めている役署の朋輩たちである。さあさあどうぞと、老母は色をかくして愛相よく内へ請じた。けれど役署の同心たちと捕手たちは、外に突っ立ったまま気のどくそうに、
「じつは、知事の公命ですが」
と、まず断わって、やんわり言った。
「雷横君は、どうしていますか」
「なんですか、伜はゆうべ、たいそう晩く帰ったものですから、まだ今朝はぐッすり眠っておりますが」
「すぐ起して下さい。公命です。猶予はなりません」
「はい、はい」
老母はあたふた奥へ馳けもどった。そしてしばらくすると、当の雷横が、衣服を着け、やや腫れぼったい瞼をもって、
「やあ」
と、そこへ立ち現われた。いや、挨拶の間もあらばこそである。左右からパッと寄った同僚がすばやく彼の両手へ手錠をかけてしまった。
「おかしら。われわれ下役の者に、こんなまねをされちゃあ、さだめし心外でしょうが、知事の命令なので、どうも仕方がありません。目をつぶって、とにかく、ゆうべの小屋掛けの木戸まで歩いておくんなさい」