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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

盧はそういって、泊中の見送りを謝し、夢遊一百余日の感慨を、金沙灘の船上に吹かれながら、やがて対岸に渡り、日をかさねて、じつに久しぶりな家郷北京府に帰った。

たそがれ過ぎれば関門は閉まる。あぶなく間にあって、彼は、城内大街の灯をまばゆげに、足のうつつもないような歩みだった。するといきなり誰かその袂をつかまえて、

「だ、だんなさまっ。……ああ、大旦那だ。待ってました。どんなにお待ちしていたかしれません!」

と、果ては大地に伏して、泣きじゃくってしまう男があった。

「なんだ。乞食かと思ったら? ……。いったいおまえは誰なのか」

「こ、こんなボロ、垢面、素はだし。お見忘れも無理ではございません。私は小乙(総領むすこをいう世間の愛称)です。小乙の燕青です」

「げっ……。オオッ、燕青だ。燕青だわえ。だが、その姿はまあ、いったい何としたざまか」

「お留守中に、追ン出されました。何一つ持たせられず、裸のままで」

「たれに?」

「奥さまと、大番頭の李固から、出て行けといわれまして……。ご主人! ここへお帰りなすっては大変です。もういちど、もとの所へお引っ返しなさいまし」

「何をいう。