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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
へい、きっと女房も、びっくりするに相違ございません」
これが縁で、その日を皮きりに、彼は街へ出るごとに、李小二の店へもよく立ち寄った。
裏街の小料理屋で、女房と小僕を使って、李小二は厨房も自分でやっている。牢役所の獄吏にも馴じみが多いので、役所へきたついでには、天王堂へもきて、林冲の洗濯物や縫物を見てくれたり、肉饅頭をおいていったり、とにかく気心のいい夫婦なので、林冲もとんだいい知人をえたと、よろこんでいた。
すると、その年も越えて、或る日のこと。
「た、たいへんですぜ、林冲さま」
「なんじゃ李小二。顔色を変えて」
箒を手に、そこらを掃いていた林冲は、彼があたふたと求めるまま、急いで、堂内に入り、そこの一房の扉を、内からぴったりと閉めた。
李小二が店をすてて告げにきたのを聞けば、なるほどこれは、林冲の身にとって、容易ならぬ凶変を思わす予報にちがいなかった。
今日の午下がり頃だという。
ぶらりと、彼の店へ入ってきた二人づれの横柄な来客があった。
一人は、色の生ッ白い小づくりなにやけ男。もう一人は軍人らしい体つきの赤っ面。ともに、年は三十がらみだ。何気なく「いらっしゃいまし……」