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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「ほい、こいつは、どうも……さあ、執事さまも一杯おやんなすって」
「いかさま、これはよい焼酎だな。むむ美味い。楊輸送使にも、一椀すすめてみよう」
しかし、楊志はいッかな飲もうとはしなかった。もともと、彼はそう飲み手ではない。だが、喉の渇きは、彼とて同じだった。そこでつい、もう桶も空となりかけたころとなって、
「ひと口、飲るか」
と、わずか半杯ほど飲んだ。
「ありがとう。……おかげで今日は、もとの麓へ舞い戻りとござアい。はははは。じゃあ、皆さん、ごきげんよう」
酒売りの男は、愛想をいうと、空桶担って、もと来た坂道の方へ、すたすたと、足早に立去ってしまった。
このとき、やや離れた松林の一端には、さきの棗商人七名の顔が、まさに眼じろぎもせぬ七体の石像みたいに、じっと、こっちを見すましていたのである。
――と、遥か坂下の方で、もう姿の見えぬ酒売りの男の田舎唄が聞えていた。それが合図だったのだろう。とつぜん、七人は爆笑の声もひとつに手を打ち叩いた。
「どんなもんです! この首尾のよさ」
「さすが今孔明の智多星呉用先生だ、先生が書いた筋書どおりよ」
「ざまアみろ、悪官府の召使いどもめ」