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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
せっかくですが、ご斟酌なく」
「なぜ取ッて下さらんのかな。ご遠慮は抜きにしましょうや」
「お心の底は見えた。しからば、これで私どもはおいとまいたしますよ」
「ま、そういわんでもよかろう。何も無下に仲間入りをお断りするわけじゃない。じっさい、冬にでもなると、この大家内、糧や酒は足らなくなるし、住居も不足でな」
ここまで、黙って聞いた林冲は、ついにその双眉をきっと青白い炎にして、末席の椅子から大喝を発した。
「嘘を申せっ、王倫っ」
「な、なんだと。きさまは林冲、頭領のこのほうに、何をいうか」
「聞いてはおれん。そもそも、拙者が初めてこの山寨を頼って来たときも、いまいったのと同じ口上だったではないか。しかも、穀倉には蓄えも山と積みながら」
「だまれ、この忘恩の徒め。――柴進旦那の紹介と思えばこそ、能もないのに、むだ飯食わせて飼いおけば、いい気になって」
「能なし?」
「山寨へ来てから、どれほどな功をたてたか」
「まさに何の稼ぎもしていない。しかし、汝もまた、無能の飾り物ではないか。官途を望んだ落第書生が、流浪の果てについこんな巣を見つけて、やくざを集めたというだけのはなしだ」