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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
ばばは、べつにもう」
「こっちこそ、ぞッと後悔したところだ。その上、おまえまでを殺すほど狂乱はしていない。ふびんなことをした。ばば、かんべんしてくれい」
「も、もッたいない。わ、わたしさえお助け下されば。……けれど、アアどうしましょうぞい。この婆は、もう喰べてはゆかれません」
「仏への追善だ。それだけは、ひきうける。一生末生、おまえは食うに困らせぬ。……そうだ、夜が白む。はやく葬儀屋へ行って、棺桶をあつらえて来い。そして隣近所へは、急病のていにでもしておいてくれ」
「よ、よろしゅうございますとも。決して、この上ご恩人のだんなへ、ご迷惑はおかけいたしません。けれど、どうぞ万端のこと、この婆の身の行くすえは」
「ああ見てやるとも、案じるな」
「だが、だんな、もう癲動しちまって何だか物もいえません。それに、婆惜がお世話になっていることは、近所の衆も知っていること。葬儀屋まで、ご一しょに行ってはくださいませんでしょうか。助かります。この娘もまあ、あんまりわがまま育ちから、ついまアこんな……」
ぼろぼろ泣き沈むのを見ては、宋江も胸をかきむしられるようだった。で急いで、台所で手くびなどの血糊を洗い、婆を連れて、夜明けの町へ出て行った。