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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
王婆は一人、二階へあがって、明けがたまでに、死骸の様をとり繕い、誰の眼にも、病死としか、見えないように拵えた。
「さ。……これからだよ大事なやまは」
ここ気懸りなので、西門慶も早朝にやって来た。婆から「うまいこと、行きましたよ」と囁かれて、彼もまずは、ほっとした色だが、近所の外聞、人目の偽瞞、そして役署の検死やら火葬の認証やら、無事、灰にしてしまうまでは、まだまだ、安心とはいいきれない。
「ねえ旦那、役署の隠亡がしらは、何九叔って男ですが、あいつはひどく、死人調べには眼が利く男だと聞いてますが」
「よしよし、役署向きなら、どうにでもなる。九叔のことなら、心配するな」
「お願いしますよ。そこでバレたら、葬式も出せませんからね」
「それよりは近所が恐い。金蓮にも、よっぽどうまくやらせないと」
「抜かりはござんせん。なんなら、ちょっと覗いてごらんなさいましな」
確かめたさも半分、不気味も半分、西門慶は隣の二階へ梯子段から顔だけ出した。もう棺桶も来ていて、仏前仏具の手廻しも、なるほど万端抜かりはない。そして金蓮は、夜どおし泣き疲れたような姿で、祭壇の前にうな垂れていた。