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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
その日も自分は往来中で忽ち婆に捻じ伏せられてしまい、一方、武大さんの方は、首尾よく奥の部屋まで飛び込んで行ったらしいが、後で聞けば、これもまたあべこべに、間男の西門慶のため、脾腹を蹴られて、意気地もなくその場で気絶してしまったそうな……。
なんでも、武大さんが病床についたのは、それからのことで、その日以後は、いつも見える公園にも饅頭売りに出なくなった。――と、すぐ四、五日してから死んだという世間の噂だった。なんだか自分までが空恐ろしい気がしてきて、そのことは、つい今日まで噫にも出さずにいたが、何で武大さんが急に死んでしまったのやら、その辺のことはさッぱり知らない――と、いうのであった。
「よし、よし。よく話してくれた。それに相違ねえな」
「ちッとも嘘じゃないよ」
「じゃあ、どこへ出ても、その通りに言ってくれるか」
「ああ、白洲へでも何処へでも出ていうよ」
その日、武松はこの哥と九叔とを連れて、県役署の門に入り、直接、知事の面前へ出て、逐一を訴え出た。
この知事は、かねがね武松には好意的である。
大いに驚いた容子ではあるが、その供述は、よく聞いてくれた。しかし、一応三名を別室へ退げ、さっそく庁の部局長らを呼び入れて、