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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
かねて城県から諸州へ配付された“宋江人相書”なるものはご記憶にあるはずではございませんか」
穴のあくほどじイっと宋江の顔やら風采を見つめていた秦明は、やがてのこと、がくんと肩を落して平伏した。
「いったい、これはどうしたわけか。どうして、かのご高名な宋押司が、こんな所におられたのか。……まるで夢のようだ。自分のしたことの恐ろしさに身がふるえる」
「どうぞお手を上げてください。いかにも宋江は自分ですが、それではお話もできかねる」
宋江はしいて彼を対等な一椅子につかせ、そして、城県出奔の事情から、つい先ごろ、花栄の家に身を寄せているうちの奇禍と、劉夫妻の奸計におちたことなどを、逐一諄々とはなしてゆき、その理非黒白をほぐしながら話して聞かせた。
「過ッた」と、まっ正直なだけに、秦明は、慚愧と義憤におもてを焼いて――「すぐ拙者から慕蓉閣下へ釈明しましょう。まるで事実はうらはらだ。明朝ここを放してください」
「いやまあ、そのお体では、即座にご出発は無理でしょう。まあ、ごゆるりと」
いわれてみれば、豪気な秦明も五体節々痛い所だらけである。手当をうけてつい二日は過ぎた。