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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
05 一九三八年(昭和十三年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页
面白い仕事であると思います、訳さえよければ。ダーウィンとファブルとの感情的いきさつも小説的ですね、ダーウィンがゆとりのあるイギリスの医者の息子で、イギリス流の気質でああいう体系的傾向を示したのに対して、コルシカの中学の貧乏教師をやったファブルが、フランス南方人のガンコさで反撥して、一生反撥していたところ、興味がある。文章をファブルがああいう擬人法で書いたのにもダーウィンの文章への明言された反撥がある。だが、今日第三者の目から見た場合、科学的な著作或は科学者の文章としてやはりダーウィンが上であります。いつか書いたかしら、ダーウィンという人は文章がいつの間にか牛の涎になってダラダラダラダラのびてゆくうちに、文章のはじめと終りとが自分で判らなくなって大いに困却したと自分で書いているのが可笑しい。又、小切手(銀行の)を書くときの大騒ぎぶり、金槌や何か皆自分の仕事場においといて子供らにそれを貸すときの勿体ぶり、いかにもイギリスの中流人気質です。日本人は宣教師がああなのかと思うが、宣教師でなくても十九世紀のイギリス人に共通なものなのだと可笑しい。このうち(島田)のあわてかた、物忘れ、非常な物見高さにしろやはり一つの特徴で、うるさくて腹が立ってその癖滑稽で可愛い。