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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
05 一九三八年(昭和十三年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页
それは、退院後の余り威張れない効果をともなった態度(自注15)という点。
このことがとり出されたとき、何より自分は苦痛の感じで間誤ついて、わるかったという風に思い、言葉に出して弁解の余地はないとも云った。けれども、猶横になっていろいろいろいろ考えて見ると、自分の心持として当時のいきさつがどうしてものみこめない。良人に対してどのように一貫したかということとの連絡で、どうしても単に効果として云われたことを、へいとそれなり自分が承知したとすれば、その不見識というか、もろさというか、それがどうも腑に落ちない。自分は一刻も早くかえりたかったのだろうか? 決してそうではなかった。父がよくこう云った。お前のすることは間違っていないと思うよ。だが、儂は切ないからね、可哀そうで切ないから、儂の生きている間はそういうことのないようにしておくれ。もう僅かだよ、二三年の辛抱だよ。よくそう云った。その父は、自分が最も心にかけていた状態において死んだ。思いのこすことは一つもなかった。一つの状態がさけ難いなら、そこの必然を最も純粋に経験すること、それが、人間、作家としての何よりの価値である。