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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
05 一九三八年(昭和十三年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页
これもめずらしい経験です。半分意識しているのね、他の半分の意識が変に明るいようなサワサワしたような工合で、盛にうわことが云いたい気がするの。きっとあなたでもわきにいらしたら云ったに違いないと思います。意識してこらえたけれどもちょいちょい、いやよ、だとか何だとか云っていた由。今の疲労の種類は何だか分らないが、ともかく、何日でもまるで静かなところへ頭をつっこんで眠りつづけたいという欲望のように感じられて居ります。そちらの懐の中へ顔を押しこんで眠りたい、そういう工合。
すっかり着ているものをはがれて、目かくしをされて、暖い空気の手術室の中で何か堅い台の上にねかされたとき、それは臥かされたよりころがされた感じで、非常に無力な異様な感じでした。今度はいろいろ珍しい経験をいたしました。あなたも手術で入院していらしたことがあるのね。この間うち下すった手紙では、私はいろいろにあなたが闘病の間に行っていらした工夫や努力や不如意の克服やらをはっきりと感じることが出来、深い感想があります。
この手紙のあとは元日に又書きます。
この疲労のために、傷の快癒よりも、全体のろのろと進行している形です。