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ひきょうのにちりんき

秘境の日輪旗

蘭 郁二郎

「秘境の日輪旗」少年文庫、新正堂、1942(昭和17)年9月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,829 字 · 169 页

青空文庫

――どこにも人の住んでいない島に人の話し声がするはずはなかった。

しかし、たしかに、さっき英夫たちがスコールを避けた岩のあたりから、ぼそぼそと低い人の話し声が聞え、だんだんこちらに近づいて来るらしかった。

いいようもない不気味な戦慄が身内をはしった。

「祥ちゃん――」

英夫は、まだぐっすりと寝息をたてている祥子をゆりおこした。

「なあに……」

祥子は目をこすった。

「ほら……聞えるだろう……人の話し声が」

話し声ばかりではなしに、黒い人かげが、ゆっくりとした足どりで近づいて来るのが夜目にもわかった。

「なんでしょう、野蛮人でしょうか、それとも幽霊かしら?」

「しっ!」

黒い人かげは、一人、二人、三人、四人まで数えられた。なだらかに傾斜した砂浜を、身ぶり手真似をまじえて、何かしきりに話しあいながら、だんだん英夫たちのいる方へやって来る。

もう百メートルとは距っていなかった。

前の一人は、サロンを腰に巻いただけの土着人らしく、その後から来る三人は、白い上衣に半ズボンをはいているらしかった。土着人らしいのをのぞけば、みな背が高かった。

「英語で話しているらしいね」