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さぶ
さぶ
山本 周五郎
「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页
十四の三
「そんなことを云われる柄じゃあねえ、おらあいまでも頓馬でぐずで能なしなんだ、けれども」とさぶは屹と眼をあげて云った、「もし栄ちゃんの役に立つんなら、おらどんなことでもするよ」
十四の三
「いきり立っちゃったな」栄二は苦笑いをして、その場の空気をほぐすように、箸を取りながら明るい調子で云った、「――二人だけで食う初めてのめしだ、肩の張るような話はやめて、賑やかにやろうぜ」
「酒をもう一本ずつやるか」
「これでよそう、仕事のめどがつくまでは、飲みたくっても一本、できることなら飲まずにとおすつもりなんだ」そう云ってから、彼はてれたように額の脇を指でこすった、「――またいきまいちゃうな、どうもいけねえ、しゃばへ出て来たんですっかり戸惑っちゃったようだぜ」
「すぐにおちつくよ」とさぶが心配そうに云った、「二、三日はしようがねえさ」
明くる日、栄二はさぶに伴れられて、金杉三丁目へゆき、おすえの父親に会った。筆屋は小さな店で、小僧が一人、平蔵は妻を亡くして長いこと独りぐらしだという。おすえとは顔も躯つきもまったく似ていないが、口の重い、温厚そうな人柄で、もう五十を越したように老けてみえるのに、としは四十五歳だと云った。