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さぶ
さぶ
山本 周五郎
「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页
どこでも職人は五人以上と見積り、しかも仕事の内容からいって腕っこきでなければならない。とすると、それだけでもこの季節に江ノ島などへ出仕事にはやれない、もしもやるとすれば、材料をべつとして職人の手間だけでもこれこれと、伊平の考えていた予算より、三倍も高い金額を要求したということであった。期限は正月にまにあえばいいと聞いたから、栄二はさぶと二人でやれると思った。賃銀などはどうでも、なにより仕事にありつきたかった。それも本筋の仕事なのだから、頼んでもやりたかったのである。
「酔ってたんだな」と栄二は云った、「酔ってたから、あんなにすらすらいっちゃったんだろうが、いま考えてみるとまるで夢のようだ」
「現にお金がそこにあるじゃないの」とおのぶが云った、「まさか栄さん、いまになっていやだなんて云うんじゃないでしょうね」
「おれの云うことがそんなふうに聞えたか」
「あたし忘れてたわ」と云っておのぶは立ち、自分の盃を持って来ながら、お松に向って酒をつけるように命じ、また栄二の向うに腰を掛けた、「さっきは文句を云うつもりで飲む気だったけれど、こんどはお祝のためにあたしもいただくわ」