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さんごくし

三国志

吉川 英治

06 孔明の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 161,356 字 · 323 页

青空文庫

「丞相へお祝いをのべにきましたのじゃ」と、卒へいう。

卒の取次を聞くと、曹操はすぐ出てきた。そして一同に席を与え、

「おまえ達は、幾歳になるか」と、訊ねた。

一人は百四歳と答える。一人は百二歳という。最低の者でも八十、九十歳だった。

「めでたい者達だ」と、曹操は、酒を飲ませたり、帛を与えたりした。

そしてなお、いうには、

「予は老人が好きだ、また老人を尊敬する。なぜなら、多難な人生を、おまえ達の年齢まで生きてきただけでも大変なものじゃないか。生きてきたというだけでも充分に尊敬に値するが、また、悪業をやってきた者では、そこまで無事でいるわけがない。だから高齢者はすべて善民であり、人中の人である」

老人達はすっかり歓んでしまった。百何歳という中の一翁が、謹んで答えた。

「いまから五十年前――まだ桓帝の御宇の頃です。遼東の人で殷馗という予言者が村へきたとき申しました。近頃、乾の空に黄星が見える。あれは五十年の後、この村に稀世の英傑が宿する兆じゃと。……その後、村は袁紹の治下になって悪政に苦しめられ、いつまでこんな世がつづくのかと思っていましたところ、まさに今年は、殷馗の予言した五十年目にあたりますのじゃ。