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さんごくし

三国志

吉川 英治

06 孔明の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 161,356 字 · 323 页

青空文庫

四

「死を急ぐ人々は、即座に名乗り出でよ。雲長関羽が引導せん」

と、大鐘の唸るが如き声でどなった。

四

震いおそれた敵は十方へ逃げ散ってしまったらしい。ふたたび静かな松籟が返ってきた。

関羽は、二夫人の車を護って、夜の明けぬうち鎮国寺を立った。

別れるにのぞんで慇懃に、長老の普浄に礼をのべて、ご無事を祈るというと、普浄は、

「わしも、もはやこの寺に、衣鉢をとどめていることはできません。近く他国へ雲遊しましょう」

と、いった。

関羽は、気の毒そうに、

「此方のために、長老もついに寺を捨て去るような仕儀になった。他日、ふたたび会う日には、かならず恩におこたえ申すであろう」

つぶやくと、呵々と笑って、普浄はいった。

「岫に停まるも雲、岫を出ずるも雲、会するも雲、別るるも雲、何をか一定を期せん。――おさらば、おさらば」

彼に従って、一山の僧衆もみな騎と車を見送っていた。かくて、夜の明けはなれる頃には、関羽はすでに、沂水関(河南省・洛陽郊外)をこえていた。

陽の太守王植は、すでに早打ちをうけとっていたが、門をひらいて、自身一行を出迎え、すこぶる鄭重に客舎へ案内した。

夕刻、使いがあって、