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さんごくし
三国志
吉川 英治
06 孔明の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 161,356 字 · 323 页
名を張飛とかいう恐ろしげな大将が四、五十騎ほどの手下を連れてきて、にわかにあの古城へ攻めかけ、以前からそこを巣にして威を振るっていた千余のあぶれ者や賊将をことごとく退治してしまいました。そしていつの間にか壕を深くし、防柵を結び、近郷から兵糧や馬をかりあつめ人数もおいおいと殖やしてきて、今では、三千人以上もあれに立て籠っているそうで……何にしても土地の役人や旅の者でも、震い怖れて、あの麓へ近づく者はありません。旦那方も、道はすこし遠廻りになりますが、こっちの峰の南を廻って、汝南へお出でになったほうがご無事でございましょうよ」
さりげない態を装って聞いていたが、関羽は心のうちで飛び立つほど歓んでいた。
土民を追い放すと、すぐ孫乾をかえりみて、
「聞いたか、いまの話を。まぎれもない義弟の張飛だ。徐州没落ののち、おのおの離散して半年あまり、計らずもここで巡り会おうとは。――孫乾、貴公すぐに、あの古城へはせ参って、仔細を告げ、張飛に会って、二夫人の御車をむかえに出よと伝えてくれい」と、いった。
孫乾も勇み立って、「心得て候う」とばかり直ちに駒をとばして行った。