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うえすぎけんしん
上杉謙信
吉川 英治
「週刊朝日」1942(昭和17)年1月4日号~5月24日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,102 字 · 256 页
一 有限りの物、腰兵糧につくべし。要は明日一日の分にて足る。
一 かねてこの事ながら甲冑弛みあるべからず。草鞋の緒かたくせよ。持道具めいめい日頃手馴れの物たるべし。奇を好み、身に過ぎたるは持つな。不得手の獲物損あり。
一 亥の下刻(午後十一時)陣払い。
一 陣所立ち退く前に、諸所の篝火は殊更つよく焚き捨てよ。紙旗、有る限り立て残すべし。
一 敵先鋒の散兵、間者輩、疾く山へ潜り入ること備うべし。味方、山を出るあとになお百名の屈強は残し行くべし。敵の忍びあらば逸せず討果すこと。
一 予が中軍の馬廻り、大勢は無用、ただ十二人と定むべし。
千坂内膳 市川主膳 和田兵部 宇野左馬介 大国平馬 和田喜兵衛 芋川平太夫 永井源四郎 岩井藤四郎 竹俣長七 清野国生 稲葉彦六
以上は、書付触れであったが、そのほか口授伝令で、麓の諸部隊にまで告げ渡って行ったことばには、
「明日、御大将には、遽に、御帰国のお旨、仰せ出された。故に、ただいまより匆々に、荷梱を仕舞い、荷駄にくくし付けられい。火急なれば、亥の下刻前に御発向仰せ出さるるも計り難い。いつなん刻にてもすぐ腰立つようお構えあれ。