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けんきょうじゅなん

剣侠受難

国枝 史郎

「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页

青空文庫

「ああここは掃除町だ。妾の家があそこにある」

夢中でバタバタとかけ込んだ。

真っ先にお京を目つけたのは、庭を掃いていた若党で、

「お嬢様がお帰りでございますぞ!」

声に応じて走り出したのは、父平左衛門、兄舞二郎、袴広太郎、臼井金弥、まず父と子が抱き合った。

「お京!」といったが涙を流し、「お礼を申せ広太郎殿に。おかげだおかげだ、広太郎殿のな!」

だがその後でもらした言葉は、まことに不思議なものであった。

「これで切腹はまぬかれた。お京の身の上に間違いでもあったら、あのお方に対し、いきてはいられぬ」

巻軸は元の持ち主へ帰り、お京は家へ帰って来た。事件は一段落ついたとはいえ、間もなく起こった二つの事件で、その平和はかき乱された。

その翌日のことであるが巴御殿の門前へ、フラリと現われた人物がある。

「傀儡舞わしましょう、傀儡舞わしましょう」

例の老人の傀儡師であった。

「そもそも傀儡のはじまりは、日本においては神の頃、神代時代にございます」リリカルに口上を述べ出した。「下って飛鳥奈良朝から平安朝に至っては、色売る女がこれを使い、下品になったは不面目、源平北条足利氏、戦国を経て御代となり、ますます巧みの傀儡舞わし、わけても拙者の人形は、南蛮渡来の活き傀儡、魂あって踊ります。