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けんきょうじゅなん

剣侠受難

国枝 史郎

「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页

青空文庫

それはそうとこんな山中に、どうしてこんな美しい娘が、猿などと一緒に遊んでいるのだろう? 衣裳はといえば大振り袖、べに色勝った友禅縮緬。ううむ、帯は京物だな」まじまじ見守ったものである。

若いさむらいに見守られても、君尾はいっこう恥ずかしがらなかった。野原を吹く夏の風! そういったような性質で、ものにかかわろうとしないからである。とはいえいかにも江戸っ児らしい、洗い上げたりりしい若武士が、うっとりしたようなキョトンとしたような、やや道化た眼つきをして、いつまでもマジマジと見ているので、とうとう明るく吹き出してしまった。

「ホッ、ホッ、ホッ、ホッ、おさむらい様、お珍しそうでございますことね、でもお気の毒でございますわ。秋祭りにはまだ間があり、夏祭りは過ぎてしまいました。当分妾の顔の中を、だしは通りはいたしますまい。ホッ、ホッ、ホッ、ホッ、おあいにくさま!」いいたいことをいってしまった。

「や、これは、お手きびしいことで」しかし広太郎も吹き出してしまった。「アッ、ハッ、ハッ、ハッ、面白いことをおっしゃる。だが無作法はお許しを願い、どうぞもう少しお見せくだされ」