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けんきょうじゅなん

剣侠受難

国枝 史郎

「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页

青空文庫

恋人の家

若党ここでニヤリとした。

「うむ、そうか、臼井殿」にわかに広太郎いやな顔をした。それにはもっともの理由がある。広太郎の恋の競争者だからだ。

玄関からグルリと庭づたい、裏庭の方へ行って見た。縁に腰かけた三人が、面白そうに話していた。

「これはようこそ広太郎殿」真っ先に舞二郎が声をかけた。

「おや、これは広太郎様、ようこそお出かけなさいました」こういったのはお京である。

「これはこれは袴氏、今お噂をしかけたところで、お待ち申しておりましたよ。やっぱりそんな、噂をすれば影、お見えになるだろうと存じていました」臼井金弥の挨拶には、なんとなく毒気が含まれている。

恋人の家

何となく毒気の含まれている、臼井金弥の挨拶を聞くと、広太郎額へしわを寄せた。

臼井金弥は旗本の長男、父は臼井小六郎といい、二百石の安祥旗本。家柄はよいが家計はよくない。袴家に比べると問題にもならず、小松原家に比較しても、まだ甚だしく見劣りがする。金弥当年二十二歳、広太郎よりは一つ下、武道は未熟、学問もないが、男振りだけはばかによい。といってりりしい男振りではなく、色なま白く眉細く、鮎のような形をしたなまめかしい眼、鼻の高いのはいうまでもなく、べにをさしたような受け口など、成長した陰間とでもいいたげである。