轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

けんきょうじゅなん

剣侠受難

国枝 史郎

「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页

青空文庫

降り来る火の粉、渦巻く煙り、それを開いて異風天狗、武器蔵の方へひた走る。敵はおおかた散ったらしい。切り込んでくる者もない。

屋敷をめぐると一個の建物、ここばかりは燃えていない。すなわち本陣武器蔵である。

床上に横たわった杉窪の銅兵衛、胸の繃帯唐紅だ。

走り込んだ紀州頼宣、天狗の面をかなぐりすてると、

「銅兵衛!」と呼んで頭をかかえた。「気を確かに! 頼宣であるぞ!」

銅兵衛かすかに眼をあけたが、

「おっ、お館様……もったい至極! ……殿、殿、姫君を奪われました! ……申し訳……申し訳……ござりませぬ」眼を閉じガックリ項垂れたが、譫言のようにつぶやいたのは、「取られた……取られた……二本の巻軸……まだ大丈夫だ、しっかりたのむ……将右衛門どん、しっかりたのむ!」

将右衛門どん、とは何だろう? しかし鉄砲にあたって以来、絶えず叫んでいる言葉であって、君尾を取り返しに追っかけて行った、広太郎もこの言葉を聞いていた。

ふたたび眼を開かぬ杉窪銅兵衛、そのまま息が絶えてしまった。

ちょうどこの頃のことである。杉窪盆地から西南の山路、ふもとへ下れば草加宿となる。そのウネウネとした山路を、杉窪の方へ上ってゆく、一個不思議な人物があった。