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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页
「気がつかれた!」とお町の歓声!
「やれやれ」という忠三の声!
とたんに広太郎、叫んだものである。
「お助け致す、君尾殿!」
その君尾だが、文三にだかれ、山の反対側を走っていた。
「助けてくださいヨー、誰か来てくださいヨー」
火光は見えない。月光ばかりだ。
「お嬢様、お嬢様。もう駄目です。呼んだって誰が来るものですか」文三走りながらしゃべりまくる。「謀反までしたこの文三、みんなあなたがほしいからで。どうやら里は亡びたらしい、銅兵衛さんだって傷を負った。助かりませんな、鉄砲傷だ! 家もなければ親もねえ、それが今のお嬢さんで。文三におすがりなさいまし。大事にしますとも、大事にします。一緒に住みましょう、町へ出てね。働きますぜ、お嬢様のためだ。だからお嬢様もおとなしく、あっしの子供でもうむがいい。誰と暮らしたって一生でさあ。こんなにこがれている文三だ。添って功徳をお果たしなせえ。駄目駄目、駄目駄目、もがいたって駄目だあ」
林の中へ駈け込んだ。と何物か文三の顔へパッと飛びつくものがあった。
「ワッ、いてえ! 眼を引っかきゃアがったア!」
老人と少年武士
文三の顔へ飛びかかったのは、君尾の飼い猿三吉であった。