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けんきょうじゅなん

剣侠受難

国枝 史郎

「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页

青空文庫

狐と狸

「悪いか」と睨んで南蛮部屋へ通る。ドンと寝椅子へ腰かけたが、「あねごがいねえと寂しいなあ」一息にグーッと眠ったが、眼ざめたときは翌日の正午、と、戸が開いてノッソリと、はいって来たのが島原城之介。

「よう島原か」「うん、早引」

狐と狸

睨み合った忠三と城之介、ひとしきり部屋内静かである。と、笑ったのは忠三である。

「ご精が出るの、え、島原」

「うん」というと腰かけた。「手に入れるまでは毎日来る」

「よかろう」と忠三せせら笑ったが、「出世の秘訣は運鈍根。ところがお前のやり口は、根鈍運というやつだな」

「出世とは違う、女の話だ」

「似たようなものさ、何が違う。おめえがあねごを手に入れれば、途方もねえ出世といっていい」

「ふふん」というと城之介、ギロギロあたりを見廻したが、「今日も帰っちゃアいねえのか」

「そうさなあ」と冷ややかに、「南蛮屋は随分手広いが、おっ振るって探すに手間暇はいらぬ。ひとつ家探しをしてみねえ」

しかし城之介返辞をしない。ムッとした眼つきで見廻している。

「だが」と城之介いい出した。「猫も、鸚鵡もいねえところをみると、持って行ったに違えねえ。そうよ一度はここへ来てな」