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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页
道中師にも変化はない。
鈴ヶ森まで来た時である。ふいに道中師が横へそれた。後から続いて虚無僧が行く。耕地があって野があって、こんもりした森が立っていた。手拭いを出してバタバタバタ、切り株を払った道中師。
「おかけなすって、一休み」
虚無僧腰かけて天蓋を取った。と、すばらしい美青年。富士額で、細い眉、おんもりとした高い鼻、ちょっと酷薄ではあるまいか? 思い切って薄い大型の口、だが何より特色的なのは、一見黒くよく見ればみどり、キラキラ光るひとみである。手に余るほどの大量の髪、これは文字通り漆黒で、それを無造作にたばねている。肌の白さなめらかさ、青味を帯びないのはどうしたのだろう?
「熱いねえ、ずくずくだよ」
いいながらグイと胸をあけた。あっ! 張り切った二個の乳房、胸もといっぱいにもり上がっている。まさしく変装した女である。
「忠公のばかめ、呆れもしない。なんと思っての悪ふざけだい」
「へい」道中師小びんをかいた。「手練の捕り縄、いかがのものかと、お目にかけたんでございますよ」
「あれで手練かい、叩き落とされたくせに」
「中条流の捕り縄も、あねごにかかっちゃあ文なしだ」