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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页
美しい夢を
そこで実家がありながら、私はそこへ帰ろうともせず、あなたと一緒に住んでおります」
「たいへんお気の毒でございますこと」
「最初私には疑問でした。いったいどういう女だろうと?」
「妾、毒婦でございますの」
「はい、さようで。この私にも、ある時はそんなように見えました」
「こわい女でございますのよ」
「私が命を助けられたばかりか、お京様を天草の屋敷から、無事にお取り返しくださいましたのも、やはりあなたでございました」
「あなたのおたのみでございましたから。……」
「二重三重の恩人です」
「いやな言葉でございますこと。……」お町不足らしくいうのであった。「恩人! 恩人! どこまでいっても恩人!」
すると広太郎暗示的にいった。「男女の恋というようなものは、いろいろの関係からなり立ちますなあ」
お町じっと聞き澄ました。そのあとの言葉を待ちもうけた。
美しい夢を
淡々と広太郎はいい続けた。
「一目ぼれというのもございます。一番純な恋ではありますが、同時に一番あぶなっかしいようで。……しげしげ逢っているうちに、ほれてしまうのもございますな。女に物でもみつがれると、ついほだされて恋してしまいます。