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けんきょうじゅなん

剣侠受難

国枝 史郎

「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页

青空文庫

小太刀と鉄杖

「えッへッへッ、抜きましたね。ソレ!」

というと島原城之介、グルリ鉄杖を右手廻し、環頭をもってすくい上げた。

小太刀と鉄杖

怪修験者島原城之介。現われた時から広太郎、「残念、駄目だ!」と考えた。隅田の堤で逢って以来、敵の力量は知れている。無双の手利き、恐ろしい奴だ。が、あの時はまだよかった。というのは広太郎たっしゃだったからだ。今はいけない病後である。体も心も弱っている。太刀打ちは愚かこれまでは、戸外の散歩さえしたことがない。節々はゆるみ肉はだれ、気息をととのえるさえ覚束ない。太刀を構えて立ったものの、足もとさえも定まらない。睨んだ眼先がチラチラする。

「これはやられる! これはやられる!」

さりとて逃げることも出来なかった。いついたままでピタリと青眼、差し付けられた鉄杖を、睨みつけているばかりである。「おれは屋内、きゃつは戸外、きゃつの獲物は長目の鉄杖、おれの得物は幸い小太刀、うまく屋内へ誘い入れたら、万に一つ勝とうもしれぬ。そうだそうだおびきよせてやれ!」

その時城之介鉄杖を廻し、広太郎の足を払って来た。「うむ」というと背後へ飛んだ。そこへつけ込みスルスルスル、城之介屋内へはいってきた。