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けんきょうじゅなん

剣侠受難

国枝 史郎

「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页

青空文庫

ところがおれにはわかっている。いやいや、それとても見当だけさ。たしかなところはわかっていない、それでもう一本の巻軸を是非手に入れたいと思っているのさ。二つを合わせると完全に、どこの城だかわかるんだからなあ。が、ともかくも見当だけは、おれについているのだよ。ところでもしもおれの見当が、見当外れにならなかったら、日本の歴史はひっくり返ってしまう。そうさ少なくも徳川幕府が、キリシタン宗徒を迫害した、あの恐ろしい歴史だけはな」

ここでニヤニヤ笑い出したが、例のみつ口がほころびたため、かえって物すごく怒ったように見えた。

「というのはほかでもない」さえない調子で話し出した。「家康以来代々の将軍、すなわち秀忠も家光も、いずれも熱心なキリシタン信者! ということになるんだからなあ。こいつは実に考えただけでも、きものつぶれる話ではないか。実際代々の徳川幕府が、信者に加えた圧迫ときたら、その残忍と酷薄さにおいて、世界に名高い宗教戦のうちでも、特筆大書していいほどの、すばらしく大げさなもんだからなあ。しかるに親玉の将軍家が、その宗教の信者だとあっては、全くもってどういっていいやら、挨拶にさえ困るじゃアないか。