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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页
ところがおれの考えによれば、事実代々の徳川将軍は、たしかにキリシタンの信者らしいのさ。いやいやこれはおればかりではない。原の城にこもった一揆の中の、幹部と称される連中は、ことごとくそんなように思っていたらしい。そうしてそう思っていたればこそ、あんな騒動も起こしたってものさ。幕府攻囲軍の大将として、松平信綱をよこしたのは、決して将軍家の本意ではない。あれは二義的の策略なのさ。神主や坊主がキリシタンのために、ドシドシ縄張りを犯される、そこで大いに閉口して、幕府に向かって上訴した。キリシタンをやッつけてくださいとな! 坊主や神主の勢力は、日本としてはおろそかには出来ない。もしこいつらを怒らせると、反噬される恐れがある。反噬されると世が乱れる。政治の執り方が悪いといわれる。天朝に対しても申し訳ない。それより何より浮世には、豊臣恩顧の大名や、関ヶ原以来の浪人者や、取りつぶされた大名の家来や、そういう者がウジャウジャいる。そいつらが坊主や神主と結ぶと、ちょっと事が面倒になる。で坊主や神主の、機嫌を取らなければならないだろう。キリシタン宗徒は今のところ、坊主や神主の信者より数においてずっと少ない、そこで気の毒だが小の虫を殺し、いや殺すのではない一時おさえ、大の虫のあばれるのを防ぐことにしよう。