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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页
「今度こそ本物! 歯跡があったア!」早引忠三喜声をあげた。
「どれ!」というとイスラエルのお町、はねるように傍へ飛んで行ったが、「間違いはないよ、一本歯の歯跡! 鋤だ鋤だ、鋤を打ち込んだようだ!」
クッキリとついていたものである。
「それじゃこいつを!」
「たどって行きやしょう! ……ここにもある! それここにも!」
「もう大丈夫! ここにもあるよ!」
大またに歩いた証拠である。一間ぐらいの間隔を置き、藪地の裾に沿いながら、一本歯の歯跡がついている。
すっかり勇気づいたお町と忠三、歯跡歯跡と追っかける。と突然消えてしまった。
「おい忠さん、歯跡が消えた!」
「待ったり」というと早引の忠三、最後の歯跡へ眼をつけたが、「あねご、見なせえ、位置が違う」
「位置?」とお町にはわからないらしい。
「そうじゃアありませんか、ねえ、あねご。これまで歯跡は藪地に沿い、一の字を引いておりましたよ。ええそうでさあ、先へ先へと。ところがこいつは藪地へ向かって一の字を引いておりまさあ」
「わかった。それじゃア、城之介め、ここから藪地へはいったんだね」
「へい、さようで、疑いなく」
「では妾たちもはいって行こう」