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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页
広太郎の顔は蒼白い、小梅の里にいた頃より。そうして身体も弱々しい、小梅の里にいた頃より。しかしなんと晴ればれと、その眼が澄み切っているのだろう。
と広太郎つぶやいた。
「ああ私は休息したい。何を置いても休みたい」
「妾も同じでございます。休みたいのでございます」これがお京の言葉である。
「どうやらここでは休めそうだ」また広太郎つぶやいた。
「きっと休めるでございましょう。お互い休むことにいたしましょう」
それから永い沈黙が来た。
不意に広太郎横になった。肘を枕に寝たのである。
とお京が声をかけた。「おつむりをおのせなさりませ。妾の膝へ、ご遠慮なく」
膝枕をした広太郎、眠ろうとするのか眼をとじた。膝枕をさせたお京様は、無表情に前方を眺めている。
ちっともいやらしい形ではない。むしろ美しい群像である。人に見られても恥ずかしくはあるまい。
「エ――、エ――、エ――」と声がする。木地師達がめいめいの小屋の中で、盆だの茶筒だの菓子鉢だのへ、磨きをかけながら歌っている。鄙びた歌の掛け声である。永遠を思わせるような単調な節、森の木立に反響し、「エ――、エ――、エ――」