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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页
工場の内
もちろんそうして平和がある。
しかし、はたしてこの平和が、いつまでもつづくものだろうか? いやいや平和はつづかなかった。それから二日経った早朝のこと、「カワトの連中が湛慶川の岸へ、天幕を張った」という知らせが来た。
これが事件の発端であった。
工場の内
カワトが天幕を張ったという、ちょうどその日のことである。袴広太郎は将右衛門と、頑丈な卓を中にはさみ、工場の中で話していた。
「カワトはいったい何者でござるな?」
こう聞いたのは広太郎。
「ああカワトで、天幕組でござるよ」気もなくいったのは将右衛門。「川の岸ッぷちに天幕を張り、そこでくらしをするところから、世人称して川渉り、なまってカワトと申します」
「やっぱり木地師と同じようなもので?」
「漂泊民という点では、さよう、われわれに似ております。しかしかれらにはこれといって、きまった商売がありませんでな。もっともササラや風車や、タワシだの箕だのというようなものを、人里へ出て売りつけはしますが、それとて商売のためではなく、泥棒をするツテでございましてな」
「ははあ泥棒を致しますので?」
ちょっと広太郎眼を見張った。