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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页
いよいよ変だなアと見ていますとね、武器の手入れをやり出したんで。そいつが実に手に入ったものだ。ズンズン弓弦を張って行く、サッサと鉄砲へ火薬をつめる。で、あっしは思ったんで。カワト姿に身をやつして、忍んで来た武士に相違ないとね。するとどうです案の定だ。菊水の定紋の打ってある、一つの陣幕からノッソリと、武士が現われたじゃアございませんか。間が遠いので人相などは、ハッキリ見ることは出来ませんでしたが、頭髪は間違いなく切り下げ髪で、手に鉄扇を持っていました。そうしてはいてるのは野袴で、大将ですね。その武士に、立ち働いていた連中ども、ペコペコお辞儀をするんですもの。と、どうでしょう、もう一つの天幕、そこから爺さんが出て来ました。それもやっぱり間遠なので、ハッキリ見ることは出来ませんでしたが、身長の小さい薄ぎたない、みすぼらしい様子ではありましたが、それでいて品もあれば威もあって、とても小気味が悪いんです。こいつもやっぱり大将とみえ、そこらに働いている連中が、ピョコピョコお辞儀をするんです。ところで二人の大将ですが、肩を並べて歩き廻り、何か熱心に話しあっているんで。