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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页
「恋の眼力というやつでね」
「ああさ恋の直感でね」
「それからのあっしと来た日には、ミジメ至極でございましたよ。……さあさあ忠三江戸中を、こまのようにブンブン廻っておいで! 探しておいでよ、木地師の行方を! ……仕方がないのでヘイコラサ、あてなしに飛び出して聞き廻ると、よくしたもので、知れましたねえ」
「一挺の駕籠を引っ包み、小梅を通って江戸へはいり、ところもあろうにお父様のやかたへ……」
「へい、紀州様のお屋敷へ、スーッとはいっていったそうで」
「そこで妾はその木地師を、富士見の将右衛門と睨んだのさ。だって将右衛門はお父様の家来、原の城へこもったのもそのためだからねえ」
「だが間もなく女駕籠が、一挺お館から舁ぎ出され、そいつを守って木地師の面々、甲州街道へ出たというのが、あっしの探索した結果ですが、この女駕籠気になりますねえ」
「ナーニ妾ア問題にしないよ。それよりもう一つの駕籠の方が、妾にとっちゃア問題さ」
「つまりそいつに袴様が、乗っていらっしゃるとこういうので」
「そうとしか取りようがないじゃアないか」
「でもどうして木地師の連中、袴様をさらって行ったんでしょうね?」