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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页
それもさ、目的が大きければ、大きいほどそんなように考えるもので」忠三ひとかど考え深そうに、「だがあの時っていつのことで?」
「君尾という娘のいどころを、お前さんにはじめて明かされた時さ」
「いったいどいつがうたったんで?」
「店の酔っ払いの客だろうさ」
「風流の歌をうたやアがった」
「何をいうんだい。縁起でもない歌さ」
「さようさ、あねごにとってはね。……だが、あっしの身にとっては……」
「ふん」とお町突っぱねた。「また出したねえ、粂仙を」
「執念深うございます」
「妾もそうさ、袴さんにはね」
「面白くないというところで、打ち切りやしょうや、この話はね、ほんとにあっしは袴様では痩せるほどあねごにコキ使われていまさあ」どうやら忠三不平らしい。
「妾にゃアそうとは見えないがねえ。お前なんだかうれしそうに、妾に使われているじゃアないか」
「なるほどそうとでも思わなければ、こうまでコキ使やアしますまい」
いよいよ忠三不平らしい。
二人ズンズン歩いて行く。松明の光のとどく中で、灌木の葉が翻っている。夜が明けたと思ったのかも知れない。一つの灌木の根もとから、うずらが一羽飛び出して来た。