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けんきょうじゅなん

剣侠受難

国枝 史郎

「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页

青空文庫

とニョッキリ一本の、あらわな白骨が立っていた。たけの高い白樺である。

「だがね、あねご」と早引の忠三、意味ありそうな薄笑いをし、盗むようにイスラエルのお町を見た。

「予感があたったらどうなさいます?」

「さあ妾どうしよう」

「逢えなかったらどうなさいます?」

「ああ妾逢えなかったら」

「日本国中さがしますかね。このあっしを供に連れて?」

お町今度は返辞をしない。じっとうなだれて歩いて行く。

「そうなったら妾ヒョッとすると……」

「縄で……首を……おつりなさいますか」

「あきらめてしまうかも知れないよ」あざ笑うような声である。「どうしても縁がないものとね」

「えらい!」と忠三飛びあがった。

「あねご、それでこそ悪党だ!」

「そうかねえ。悪党かねえ」

「いよいよそうなるとこの忠三……」

「役付くとでも思うのかい?」

「え?」

「駄目だよ!」

「なぜ?」

「なぜでも!」

「だって理由は? ……」

「すかないからさ!」

「ひでえや、ひでえや。ハッキリし過ぎていらあ」げんなりとして笑ったが、ヒョイとお町の胸を見た。

母の形見

お町の胸を見た早引の忠三、ポイと話を横へそらせた。「江戸を出た時からあっしには、ひどく気にかかっていたんですがね。