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けんきょうじゅなん

剣侠受難

国枝 史郎

「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页

青空文庫

「隠語が浮世に現われたなら、また一騒動起こるだろう。イマニエル司僧様や天童様が、詮議されないものでもない」で盗み取って焼きすてようとしたが、生憎一本しか手に入らず、それを持って故郷へ帰ったが、その後も探していたのである。もう一本の巻軸を、手に入れたのが時行で、これは真実その巻軸に、巨宝のありかが書いてあるものと信じ、さらにもう一本の巻軸を、目つけ出そうとしたのである。いやいや時行ばかりでなく司僧と将右衛門、銅兵衛以外のものは、みんなそんなように信じていたのである。

ところで天童とは何者であろう? 天草一揆の表面の大将、天草四郎時貞であると、解釈するのはどうだろう? あまりに荒唐無稽かしら? とまれその後山崩れが起こり、湛慶滝も、富士見の高原から消えてしまった。残るは伝説ばかりである。正雪、時行の連合軍へ、イマニエル司僧や将右衛門が、唐櫃を見せるのを拒んだのは、死蝋となった天草時貞を、唐櫃の中へ封じ込め、滝壺の中へ隠してあったからで、聖なる犠牲者の墓をあばくことは、何者といえども欲しないのではないか。