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けんきょうじゅなん

剣侠受難

国枝 史郎

「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页

青空文庫

色こそあおざめているけれど、さすが縹緻を自慢するだけあって、眼に立つほどに美しい。トンと腰かけにひじを突いた。「これ女中、お銚子」気取ることだけは忘れない。「オホン」とイヤな咳をした。しかしすぐにガックリとなり、茫然として考え込む。

五人の侍うれしがってしまった。

「おい、三好坂、お前ゆけ」

「よろしい」というと立ち上がり、ニヤニヤ笑いながら近寄った。「あいや、お武家。お酌しましょう」

驚いた金弥、眼をあげると、三十八、九の立派な武士、向こう側に腰かけている。

「これは恐縮、いやそれには……」

「ご遠慮なさるな」とドクドクとつぐ。「南蛮屋とはおなじみかな」

「なかなかもって、今夜がはじめて。それも偶然通りかかり」

「ははあさようで、それなら結構、こんな所へは来ない方がよろしい。お見受けすればご若年。それにどうやら浮かないご様子、失礼ながら失恋かな?」沈着な声でズケズケと聞く。

すると金弥は眼を見張ったが、「ほほう、どうしてご存じで?」

「アッ、やっぱり失恋か。それはそれはご同情に堪えぬ。玄人でござるか、素人でござるか?」

「許婚でござる、拙者のな。旗本の長女で名はお京。