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けんきょうじゅなん

剣侠受難

国枝 史郎

「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页

青空文庫

昨日誘拐されましたので、それで拙者江戸市中を、尋ね廻っておりますので、お心あたりはござらぬかな?」金弥真面目に聞いたものである。

「さようさ」といったが三好坂という武士、かえってアベコベに面くらったらしい。

「いずれべっぴんでござろうな」

「いかにもさよう。天女のようで」

「いやいや拙者の思うところでは、弁天様のように美しい筈で」

「お言葉どおり、弁天様のようで」

「だが少々浮気の方でござろう」

「これは無礼!」と金弥おこった。

「貞淑無類、珍しいほどで」

「いやいや拙者の考えでは、浮気者の大莫連。それで許婚の貴殿を棄て、仇し男と逃げた筈でござる。……競争相手はなかったかな?」

「さあ」と金弥、なぶられるともしらず、「一人ありました。旗本の次男で」

「それそれそいつが仇し男でござる。おそらく今ごろは手に手を取り……」

「いやいや断じて、そんなことはござらぬ。実はその男も拙者と同じく、探し廻っている筈で」

「などと安心していると、貴殿、煮え湯を飲まされますぞ。そいつが曲者、討ち果たすがよろしい」

「さようかな? そうだろうか?」

金弥うかうか乗りかけた。「ここに一つ残念なは、そやつの方が、武道では……」