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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页
巨大な寝椅子に横になり、コロコロコロコロと音を立て、精巧な水煙草の吹管をくゆらしているのはイスラエルのお町で、この前に椅子に腰かけているのは、南蛮屋の主人でお町の同志、例の早引の忠三である。スペイン産の漆黒の猫が、部屋をグルグル歩いているのも、南蛮産の純白の鸚鵡が、もらった煎餅をコチコチと、鋭いくちばしで、壊しているのも、ちょっと風変わりの光景である。鉢植えの蘭は満開で、芳香がほのかに漂っている。古風の兵船を描き出した、大型の油絵が金ぶちにはめられ、壁の一所にかけられてあるのも、また好もしい異国趣味である。と、猫がノソノソと、鸚鵡の籠の真下へ行き、ミーンと一声やさしく呼んだ。と、鸚鵡は煎餅を一ひら床へ落とした。うまそうに猫がそれをたべる。鸚鵡と猫とは親友らしい。
ガラガラと器物の壊れる音が、店の方から聞こえてきた。
「チェッ、奴らまだいやがる。乱暴狼藉の仕放題。畜生ほんとにムカムカするなあ。どうかしてやらなけりゃあ気が済まねえ。これまでにした店だって、きゃつらのおかげでさびれてしまう。……あねご、勘考はあるまいかね」
「うっちゃってお置きよ、どうなるものか。