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けんきょうじゅなん

剣侠受難

国枝 史郎

「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页

青空文庫

万般の剣道に共通のはずだ。……堂下に僧侶集まって、一匹の猫を是非するや、南泉という味噌すり坊主、聞いた風にノコノコおりて行き、『猫は元来一物にして、敵味方を争うは迷妄のもと。これさえ切れば光風霽月、手をとってともに山中を行く、これを切るには不動智をもってすべし』などと一応もっともらしく、その実あいまいな屁理窟をつらね一刀両断に切ったのを、柳生三巌という御用剣術家、無門関あたりから引っ張り出し、三学の説をあみ出したそうだの。切る方はそれでもいいけれど、切られた猫はどうするのだ。猫の心も察せずばなるまい。……どだい俺からいわせると御用という文字が気に食わない。御用学者に御用歴史家、御用商人に御用達、御用御用と呼びかける捕り手の奴ばらときたひにはとても悪趣味で鼻持ちがならない。打ち見たところ貴殿などは、だいぶ年がお若いらしい。腐っても鯛、間違っても、御用武士などにはおなりなさるなよ。……ははあどうやらおこったな。太刀先がピリピリふるえてきた。よろしい大いにお怒りなされ。怒らない奴は佞柔だ。ヘラヘラ笑いながら小股をすくい、時々あくどい金儲けをする。こういう奴がいるために、浮世がだんだんきたなくなる。