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けんきょうじゅなん

剣侠受難

国枝 史郎

「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页

青空文庫

……どこに隠したか聞いているのだ。住居をいえ、お前の住居を」

「拙者はイスラエル教の教主でござる。信者のある所、天が下、これ皆拙者の安住地でござる」

「大きく出たな」と由井正雪、今度はあべこべにヘラヘラ笑った。

「実際浮世をおどかすには、なるたけ大きく出た方がいい。そういう点では賛成だ。しかし人を見て法を説け。この正雪にそんなことをいっても、驚きもしなければ感心もしない。上は天文下は地理、武芸十八般伊尹両道、陰陽の原理人相手相、占術禁厭方宅から、仏教儒教神道に及び、兵法では楠流、究めていないものはない。そういう俺だ。駄法螺はよせ!」ここで正雪ギロリと睨み、「それに」とトンとむちを突いたが、「お前にとっては、この俺は元来恩人ともいうべきものだ。袴広太郎とかいう小童に、搦め取られたお前ではないか、もしその筋へ突き出されてみろ。島原の残党キリシタンとして、否応なしに火あぶりだ。それを助かったというものは、われらの同志佐原重兵衛、機転をきかしてにせ同心となり、横取りをしたがためではないか。恩返しをせい、巻軸を渡せ!」

だが城之介がえんじない。「それというのも底をわれば、巻軸欲しさのしわざでござって、親切づくしではござらぬ筈、その証拠には同じ日の午後、富坂町の四辻で、その佐原殿の一群が拙者を襲ったではござらぬかな。