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ことうのおに

孤島の鬼

江戸川 乱歩

「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页

青空文庫

下手人の子供は、何喰わぬ顔をして、血や兇器をかくす為に、上から上からと砂をかぶせてしまったのです」

私は諸戸のこの気違いめいた空想に、ギョッとして、思わず相手の顔を見つめた。

「この二つの場合の内、深山木氏の自殺説は、種々の点から考えて、全く成立たない。とすると仮令それがどれ程不自然に見えようとも、下手人はあの四人の子の内にいたと考える外には、我々には全く解釈の方法がないのです。しかもこの解釈による時は、同時にこれまでの凡ての疑問が、すっかり解けて了う。一見不可能に見えた事柄が、少しも不可能ではなくなって来る。と云うのは、例の君の所謂『魔法の壺』の一件です。あんな小さな花瓶の中へ人が隠れるというのは悪魔の神通力でも借りないでは不可能なことに思われた。だが、そう考えたのは、やっぱり我々の考え方の方向が固定していたからで、普通我々は殺人者というものを、犯罪学の書物の挿絵にある様な、獰猛な壮年の男子に限るものの如く、迷信している為に、幼い子供などの存在には全く不注意であった。この場合、子供という観念は全く盲点によって隠されてしまっていたのです。だが、一度子供というものに気づくと、花瓶の謎は立所に解決する。