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ことうのおに

孤島の鬼

江戸川 乱歩

「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页

青空文庫

部屋に帰って暫くすると、久しぶりで傴僂の丈五郎が醜い姿を現わした。彼は私の部屋に這入ると、立ちはだかったまま、

「お前さんは、直ぐに帰る支度をなさるがいい、もう一時でもここの家には、いや、この岩屋島には置いておけぬ。サア、支度をなさるがいい」

と呶鳴った。

「帰れとおっしゃれば帰りますが、道雄さんはどこにいるのです。道雄さんも一緒でなければ」

「息子は都合があって逢わせる訳には行かぬ。が、あれも無論承知の上じゃ。サア、用意をするのだ」

争っても無駄だと思ったので、私は一先ず諸戸屋敷を引上げることにした。無論この島を立去る積りはない。島のどこかに隠れていて、道雄なり秀ちゃんなりを、救出す手だてを講じなければならぬ。

だが、困ったことには、丈五郎の方でも抜目なく、一人の屈強な下男をつけて、私の行先を見届けさせた。

下男は私の荷物を持って先に立って歩いて行った。先日私に話しかけた不思議な老人の小屋の所へ来ると、いきなりそこへ這入って行って、声をかけた。

「徳さん。おるかな。諸戸の旦那の云いつけだ。舟を出しておくれ。この人をKまで渡すのや」

「この客人が一人で帰るのかな」