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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

おとなしくわが輩と共に水滸の寨まで来てくれまいか」

「ばかなッ」

叱りとばすや否、盧は棒術の秘をあらわして跳びかかった。花和尚は逆にその下をくぐって振向きざま一颯するどく風を起す。せつなに、棒は砕け飛び、そして盧俊儀が抜打ちに薙いだ刀は、花和尚のころもの袖を切っていた。

「おッと、あぶねえ、和尚は退け」

また、違った声である。これなん、行者武松である。戦い戦い、密林の奥へつり込まれた。――まずい! と感じて盧はひッ返す。すると、こんどは、赤髪鬼の劉唐と名のる者。没遮の穆弘と喚く者。またわれは撲天の李応なりと、みずからいう者。あとからあとから彼を試みるように出ては挑みかかり、戦ってはまた隠れ去る始末に、さすがの盧も、全身、水をあびたような汗になってしまった。

いやそれはまだしも。――彼がその一ト汗を拭くべく小高い丘へ馳けのぼって行くと、すぐかなたなる山坂道を、銅鑼の音ジャンジャン囃しながら遠ざかって行く一群の賊の手下があり、その中には、自分の供の李固も人夫も、十二輛の貨車も、引ッ立てられているのが見えた。

「やあ、賊ども待てッ」

盧は、宙を飛んで、先の一群を追ッかけた。