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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
と四大字を書いた繍縁の大旗がひるがえってみえるではないか。
「や、や、や?」
仰天する彼の姿を、彼方では笑うかのように。
「盧員外(盧は大員外トモ呼バレテイタ)どの、盧員外どの。お変りもありませんか」
こういったのは、羅傘の下に見える人物。すなわち宋江であって、右がわに公孫勝、ひだりには呉用。
この呉用へ、ヒタと眸をすえた盧俊儀は、いまや自分がなぜここにいるかも分らぬような夢幻感と憤りの中に燃えた。
「やあ、そこにおるのは、先頃の偽易者、談天口とかいう奴だったか。おのれ、よくも!」」
「だましたと、お怒りか。わはははは」
と、彼方の笑い声は、谷谺に大きく響いて。
「いまは実を申上げる。お伺いした偽易者、まことは水滸の一人智多星呉用です。これにおられる寨主宋公明には、久しくあなたを慕っておられ、梁山泊一同協議のうえ、あなたを仲間にお迎えしようものと、すなわち、呉用が一策を用いた次第でした。――不悪、不悪」
「ばかげた夢ッ、悪戯もほどほどにしろ。山野に巣食う栗鼠や貉の分際で」
「いや、野には遺賢だらけだ。あなたもこの旗の座にきてください。天に代って共に道を行いましょう」