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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

なにかよほど恐ろしいことでも聞いたに違いない。

卓に首をよせあっていた四つの顔は、胸を上げて笑い合っていた。陸謙の手から、管営と差撥の両名へ、莫大な銀が手渡された。

――そしてまた、酒飯に移り、やがて帰り去ったのは、ついさっきで、まだ街の屋根を夕陽が赤く染めていたころだった――とある。

ここまでの話を聞いて、林冲も驚いた。

「では、陸謙と一しょのにやけ男は、富安という野幇間だろう。やつは、高家の御曹司の腰巾着といわれている佞物。だがその二人が遥々、なにしにこの滄州へやってきたのか」

「あなたを殺しにきたんですよ。……と聞いたんで、女房のやつは、ぞうッと、背すじが寒くなって、竦ンじまったわけなんで」

「銀と権力で、ここの管営と差撥を、買収しにきたわけなんだな」

「そうでしょう。なにしろ、大変なことになりましたぜ。なんとか、ご要心をなさらなくっちゃあ」

「まあいいよ。どっちみち凶状持ちとなった身だ。李小二、女房にもいってくれ、心配するなと」

しかし、さすがに、李小二が帰った後は、なんとなく安からぬものがある。その夜の夢見もよくはなかった。

「ようし。それほどまで、執念ぶかく、この林冲の一命を狙うとあるならば、いっそ、それもおもしろい。