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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
分捕り品だけでもたいへんな量である。馬匹数十頭、兵舟百余艘、弩弓、よろい甲、石火矢砲、帆布、糧食など、すべて梁庫に入れられた。
「冬じゅうの居食いで、山寨の倉も少々お寒くなっていたら、この到来物ときたぜ。なんとこんな疾風なら、ときどき襲せて来てもらってもいいな」
凱歌の角笛は、春を高々と吹き鳴らされ、梁山泊の意気、ここに全く革まる概があった。
それにひきかえ。
船も装備もみな失い、あげくに、指揮者黄安も賊に生け捕られ、散々なていで済州へ逃げ帰った官兵は、ただ事の顛末を奉行所の門へ哀号し合うだけだった。
折ふしまた、庁内の接官亭には、蔡大臣の使者と、大臣府の辞令を帯びた新任官が、都から到着していた。――それにより、旧奉行は官職を解かれ、旅装して、ただちに開封東京の問罪所へ出頭すべし、との厳令なのだ。
「さては、責任を問われるのか」
と、旧奉行は青くなって萎れたが、新任の奉行もまた、門前の哀号を耳にして、
「なんと。お取立てと思ってよろこんで下向して来たら、豈はからんや、こんな土地の、こんな群盗退治が、これからの仕事なのか」
と着任早々、ぼやいている。
とまれ両三日のまに、事務引継ぎもすまされ、旧奉行は都へ召還されて行ったが、やがてこの奉行交代の通知とともに、梁山泊にたいする協同警戒の布告が、隣県城の県役署へも廻送